『The Super Natural』A new vision of the unexplained の翻訳 |
しかもこれは、科学史家 David Kaiser が愛情を込めて『物理学を救ったヒッピー達』と名づけたことに、我々が到達する前である。これら反体制文化派の物理学者達はベルの定理10 、あるいはアインシュタインが『遠く離れたところで幽霊のような振る舞いをする (spooky action at adistance) と呼んだことで有名になったこと』の中にある、もつれた粒子が示す明白な『テレパシー的』影響に魅せられたのである11 。そのような知識人達は絡み (もつれ) の概念を数十年間そのまま持ち続けたが、一方物理学者社会のそれ以外の人達は『閉じこもって計算している』、即ち、物理学の哲学的含蓄について口を閉ざしひたすら数学をした、と語られていた12 。こうした反体制文化派の物理学者達の多くが、量子は実に人間経験にも拡大されること、その効果が超心理学上の経験や心の神秘的な経験に見ることが出来ることに自信を持っていた。そのうちの一人、私の友人かつ同僚の Nick Herbert は、『elemental mind』と『Q-uantum Tantra』という見出しの下でこれらの影響について雄弁に書いている。後者は彼の、物理的宇宙とエロチックな合体に導いてくれる科学的で霊的な実践の夢になっている。
10訳註: Bell’s Theorem。ウイキペディアから(一部改変):
1964 年、ジョン・スチュアート・ベル (John Stewart Bell, 1928 年 6 月 28 日 - 1990 年 10 月 1 日) は ”On the Einstein-Podolsky-Rosen Paradox(EPR パラドックスについて)”という題の論文を書いた。この論文で、今日『ベルの不等式』と呼ばれている結果を導いた。ベルの不等式は、局所性と実在性と呼ばれる二つの仮定を認めた任意の理論に対して成り立つ不等式だが、同論文において「量子力学では不等式が成り立たない」ことも示されており、局所実在性と量子力学が本質的に相容れないものであることを意味するこの結果は物理のみならず哲学の世界にも大きな衝撃を与えた。 その後、フランスの物理学者アラン・アスペは、量子物理学では実際にベルの不等式が成り立たないことを実験的に証明し、自然界において局所実在性が成り立たないこと (局所性と実在性が同時には成立しないこと・どのような隠れた変数を用いても, 局所性を満たす限り, 量子力学の統計的予言のすべてを再現することはできないこと) が示された。現在では、量子物理学のこの「局所性と実在性が同時には成立しない」という主張を示すあらゆる結果を、纏めて『ベルの定理』と言う。
11様々な形態の異例な経験に絡み (もつれ) を適用した最も素敵なものは Dean Radin の Entangled Minds: Extrasensory Experiences in a Quantum World (New York: Paraview, 2006) である。R-adin の本は量子物理学の哲学的含蓄を『不可能なことを可能にする為に』採用した素晴らしい例である。
12David Kaiser, How the Hippies Saved Physics: Science, Couterculture, and the Quantum R-evival (New York: W. W. Norton, 2001). 私は、この節を読み通して私に専門家のフィードバックを提供してくれた、同僚の Nick Herbertと Jane English に負うところが大きい。