HAMLET' S MILL の翻訳(『THE KEY』に関連して)#373 |
それでもバクは適切な威厳に欠けていると思われるとしたら、幾つかの証拠をアジアから付け加えることにする。ペルシャの Bundahishn は銀河を、祖父かつ共同摂政の Kai Khusrau、イランのハムレット、に倣って「Kay-us の道」と呼んでいる30。アルタイの住民達の中ではヤクート族31 は天の川を「神の通った跡」と呼び、彼らの言うには、世界を創造している間、神は空を歩き回った、と;もっと一般な使い方では「神の息子の空の足跡」という言葉であったようであるが、これに対しヴォグル族 32はそれを「森林に住む男の空の足跡」と明確に説明した。ここで人間の足跡は次第に消えている、雪靴は残ったままであるけれども。ツングース族に対して銀河は「熊の雪靴の跡」である。しかし、その人物が神の息子、森林に住む男であろうと、あるいは熊でろうと、その者が天の川沿いに一匹の牡鹿を狩り、その4肢をバラバラに引裂いて、白い道の右に左に空へ正確に撒き散らした。その結果オリオン座と大熊座は分離されたのである33 。「牡鹿の足」はHolmberg に直ちに古代エジプトの「牡牛のもも」―大熊座を思い出させたのである。こうして彼は鋭い洞察力によって容易に、その力強いもも、孤立した「一本足」の Texcatlipoca ―「日」の印である「鰐」(Cipactli)がそれを噛みちぎった―の中に、メキシコで再び大熊座を認めるようにゆきついたのだろう。Texcatlipoca はマヤのキチェ族34の偉大な Hunrakán(一本足)である35。
30Bdh. V B 22, B. T. Anklesaria, Zand-Akasih. Iranian or Greater Bundahishn (1956), pp. 69, 71.
31《シベリア北東部の Lena 川流域に住むチュルク系の民族》研究社新英和大辞典第6版
32《Ural 山脈北部に住むフィンウゴル語族の一種》研究社新英和大辞典第6版
33U. Holmberg, Die religiösen Vorstellungen der altaischen Völker (1938), pp. 201f.
34《グアテマラ南部の Maya 族の一種族》研究社新英和大辞典第6版
35 原註 さらに南にいけば、彼はそこでも熊座とオリオン座が一列に並んでいること及び天空の人物が暴力的に引き裂かれていることを見いだしただろう。W. E. Roth は(「ガイアナインディアンのアニミズムと民話研究」, ARBAE 30 号1908-09 [1915], 262 頁; cf. Zerries, pp. 220f.)ガイアナインディアンについてこう言っている:「牡牛座とオリオン座に関するあらゆる伝説はしばしば切断された腕または足の詳細な共通性を持っている。」さらにそのことはインドネシアの一部にも見られるのである。しかしその場合は、大熊座は牡牛のももになっているが、黄道帯の牡牛座はひどく切断されていて、殆ど半分が残っているものになっている。さらにもっと奇妙なのは、後期エジプト時代に、滅多にないことであるにしても、熊座が羊のももで作られていることが起きている(Studies Presented to F. L. Griffith [1932], p. 373 にある G.A. Wainwright の“A pair of Constellations”を参照。);またデンデラにある丸い黄道帯(ローマ時代のもの)に、一匹の羊が、あの天空の足、熊座を表わしているが、その足の上に座っているのを我々は見つけている。しかもそれは完全に後ろを見ている、それは伝統的な黄道帯の牡羊座にあっているのだが。我々はこれでそれから離れねばならない。