HAMLET' S MILL の翻訳(『THE KEY』に関連して)#532 |
アリスタルコスは、生きている時にアルキメデスの卓越した頭脳によってさえ無視されて、自分の考えに同調する者は一人もいなかった。12世紀後、ブルーノは神の無限性、つまり宇宙 (theUniverse) そのものことであるが、それについて神の啓示を受ける預言者ほどの思想家ではなかった。ガリレオ、真の科学者、は自分の考える宇宙
(the cosmos) に必要とした循環性の性質に十分な程ずっと支配されていた、だから彼は彼の心にすでにあった慣性の法則78 を定式化する勇気がなかったのである。彼は情熱をもって循環宇宙 (the circular cosmos) にこだわったのである。『円・循環』は彼に取っては「存在すること」の隠喩だったのである。故に彼は受け入れられない周転円79 を犠牲にしてでも『円・循環』をずっと喜んで認めていたのである。彼が穏当で平凡な根拠によってどれほど熱心に完璧な循環性を支持したにしろ、それは彼にとっては最初で最後の『表象形式』にとどまった、「ジャムシードの7つのリングのついたコップ」、「Koridwen の魔法の大釜」、「ストーンヘンジの環状列石」と同様に。「世界の調子を乱すこと」、「宇宙 (the Cosmos) の崩壊」はデカルトの登場によってのみ起こることになったのである。
78訳註「the principle of rectilinear inertia」 が原文。この言葉の中に含まれる「linear」の意味 (直線的) を考えると、日本語の『慣性の法則』の意味が分からなくてもその原語を見るだけで、『慣性の法則』が『循環性の性質』と相容れないものであることがよく分ります。だから、ガリレオはどうしても慣性の法則を定式化出来なかったのですね !
79《その中心が従円 (deferent) の円周上に沿って回転する》研究社新英和大辞典第6版