HAMLET' S MILL の翻訳(『THE KEY』に関連して)#426 |
ここで問題となるのは素朴な環境の中で粘り強く生き残っているモチーフのことである。民話に一歩下に足を踏み入れると、以下の英語版 (末尾はドイツ語の変種からのものである) になっているところの一つの物語 ( Mannhardt 1, 93) が北欧中に広がっている:
猫の群れが放棄されて崩れ落ちた家に集まっていた。そこに男が一人猫達に気がつかれないように彼らを観察しようとしている。一匹の猫が壁に跳び上がって叫ぶ:『Doldrum が死んでいるとDildrum に伝えてくれ。』男は家に帰り妻にその話を語る。家にいた猫が跳び上がって物悲しい声で鳴く:『じゃあ俺は猫の王様ということになる!』と言ったかと思うと煙突の中に飛び込んで消えてしまう。
この話は、魂が、バラバラになり、考えることもなく、琥珀の中の羽虫のように保存された死の状態になっても、肉体が如何にして生き残るかという伝説である。ギリシャの神々は無学の人々の間では猫や召使い女になっているのである; 権力者達は死んでも、その情報は残る。その繰り返しの言葉をチェックしてゆくと、標準的な形の中の「声」の伝えるメッセージが得られる、次の通り: 『放浪者よ、Diridrum の所に行ってこう伝えるのだ、偉大な Doldrum は死んだ、と。』このメッセージを携える者は、見知らぬ水夫、通行人、動物、観察者、誰でも良い。本質的なことは「権力者は亡くなったということ、しかも後継者は決まっていないということ」である。宇宙 (the cosmos) は独自の仕方の中に重要な「key event」を登録しているのである。