2015年 08月 19日
HAMLET' S MILL の翻訳(『THE KEY』に関連して)#128 |
翻訳続き#128
叙事詩の名前は Kaleva から取られた。 Kaleva というのは物語の何処にもその姿を表わさない神秘的な祖先の人物である。英雄達は彼の三人の息子である: Vaina-
moinenn(原註 この名前は母音調和した Väinämöinenn であるが、それをタイプに打つのは難儀ゆえ Vainamoin-
enn とした。)、『年老いた忠義な』、魔法の歌のマスター;Ilmarinen、太古の鍛治屋、鉄の発明者、陸や海にみつけられるものよりももっと多くのものを造り出すことができる人物;そして『皆から愛される』あるいは『生き生きしている』Lemminkai-
nen、太古のドンファン(訳註 14 世紀ごろのスペインの伝説的遊蕩(ゆうとう)貴族の名で Seville の貴族の令嬢を誘惑し, ついに彼女の父を殺して地獄に落とされる; しばしば文学・音楽の題材とされた。研究社新英和大辞典第6版)のような人物。さて、Kullervo、ハムレットのような人物(彼の物語は始めの方で記したが)、最青の靴下をはいた金髪の Kullervo はもう一人の『Kaleva の息子』であるが、彼の冒険は他とは区別して展開するようである。それらは Ilmarinen と唯一点で結びつくが、異なる時間、別の「世界が一つであった時代」に属しているものと思われる。
さて主たる出来事の行を取り扱うときにきた。叙事詩は世界の起源論を極めて詩的に始める。大気の純潔な乙女、Ilmatar は水面に下り、700年の間浮かび続けたが 、Ukko、フィンランドのゼウスが彼女に鳥を送る。その鳥は Ilmatar の膝の上に巣を作りそこに7つの卵を産む。それから目に見える世界ができあがる。しかしその世界には何もない不毛の世界のままだったがそのうちVainamoinen が大気の乙女と水から生まれた。生まれてからずっと、彼は魔法の歌で動物達や樹々を彼女に産まさせる、謂わば、自然の『産婆』の役割を演じている。ラップランド(訳註 ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの北部, およびロシア領 Kola 半島を含む地域; 大部分が北極圏内でラップ族 (Lapps) が住んでいる。研究社新英和大辞典第6版)から、能力の劣る魔術師 Youkahainen が歌で彼に挑戦するが一段一段と地面に沈んでゆく。彼は Vainamoinen に自分の妹、愛らしい Aino を、妻に約束して難を逃れる。しかしその少女は Vainamoinen の妻になりたくない、彼は余りにも老けた姿だったから。彼女は絶望して彷徨い去り最後にある湖にたどり着く。彼女は死を求めて岩まで泳ぐ;『彼女が岩の頂上に立った時、岩は彼女を多色の石の上に乗せて波間に沈んだ。』Vainamoinen は水中の彼女を探すと、彼女はサーモンになって彼の網の中に泳いでくる、自分だと分らない様にするためにからかって。そうして永久に逃げ去ることになる。Vainamoinen は他の花嫁を捜すことを決めて、探索に乗り出す。彼の目指したのは Pohja の土地、『北部の地』、漠然とラップランドとされている、魔法に強く『英雄達には残酷な』陸地である。出来事が夢の中の様に、超現実的なちぐはぐさで、進展してゆく。その芸術味のなさ、予想外の魅力そして馬鹿馬鹿しさの輝きはジャックと豆の木を思わすが、それらの背後にはその世界、意義と筋道がとうの昔に失われた世界、少なくとも人間の意識していた世界と同じ古さの話の要素が化石となって現れているのである。原初の古いテーマが記念碑的な遺跡のように立ち続けているのである。
by bbex243054
| 2015-08-19 15:23
| 科学
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