2015年 06月 05日
WHITLEY STRIEBER氏の著書「THE KEY」 翻訳 #220 |
翻訳続き#220
彼の表情にある落ち着き、幸せ、そして深い、深いユーモアのコンビネーションを書き表す方法は何もない。実際、以前にも以後にもこれほどにくつろいだ、平和そのものと言った顔を見たことはないと思う。それには、不可解な静けさもあった。死体の顔だったということが出来る。しかし、それには恐ろしいことはなにもなかった。それどころか、もし彼が死んでいるのだったら、彼の顔は、彼が幸せに亡くなり、亡くなる最後のときには秘密の喜びの匂いを残して逝った、と言っていると、私は思うだろう。
彼は再び私の名前を言った、「Whitley 」と。まごつかせる親しみだった、あたかも、私が何年も離ればなれになった後に親愛な友人に会っているみたいだった。しかし、彼を以前、見たことを思い出すことは出来なかった。決して出来なかった。それとも思い出すことが出来るのだろうか?私の最初の質問は、「誰かね、君は?」だった。
彼は目の中から私を見詰めた、顔を面白さできらめかしながら。それは、『君はそれを知ってるよ。私が誰であるかを完全に良く知っているよ。』というそれ以上は明らかにすることが出来なかったのであろうメッセージだった。混乱と困惑で体の中を衝撃が走り抜けた。そのとき私は、まるで旧友が舞い戻って来たが彼が誰なのか分らないでいるように、感じた。
それから、私は「おたく、何故出て行かないの?」と訊いた。
彼は背中を後ろに傾けて、適切な答えを考えているかのように天井を見上げた。それから彼の目と私の目が合ったが、私は、この男性が何か非常に神秘的な人であることを知るようになった。彼がそんな風に私を見るときは、彼には異邦人の趣があった。それは、別世界からの誰かのように見えるというのではなかった。そんなことは殆どない。彼がこれ以上に普通の人であることはあり得なかった。
いや違う、それ以上に名状しがたい人だった。彼の身辺に支配力が漂っている感じだった。彼の動きの正確さとスピーチの抑揚は申し分なかった、それらは極めて完全に思われたのである。正しく完璧。後で、我々が知能を持つ機械について話し合った時、私はその神秘さの感覚を再び味わうことになった。
by bbex243054
| 2015-06-05 10:24
| 科学
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